抗酸化物質はアレロケミカルズ(二次成分)

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私たちの病気の約90%が、生体での過剰な活性酸素/フリーラジカルによって、引き起こされていることが解ってきている。 このため、活性酸素/フリーラジカルを除去するスーパーオキシドディスムターゼ (SOD) のような抗酸化物質が昨今、とりわけ重要視されるようになり、種々の抗酸化機能製品が販売されている。
ここでは、活性酸素/フリーラジカルと植物との関係や植物の抗酸化物質について考えてみたい。

(1) 抗酸化物質がいっぱいの植物

一番気になる病気であるガンも、活性酸素/フリーラジカルが主要因であることが解り、 アメリカでは1990年から国立ガン研究所が中心となって 「デザイナーフーズ」計画が始まった。この目的は、 食品成分のなかでも特に植物由来の成分がどのように生体に機能し、発ガンを抑制するかを科学的に解明しようとするものである。

もちろん、生体内でも遺伝情報をもとに、 合成される抗酸化物質もある。 (資料1)
スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)、 カタラーゼ、グルタチオンぺルオキシターゼなどの酵素やメタロチオネン、セルロプラスミン、トランスフェリン等の金属結合タンパク質がある。 また、時として厄介者扱いされる尿酸 (通風の原因)やビリルビン (黄疸の原因)という、言わば生体内の産業廃棄物も強い抗酸化作用を示す。
しかし、これらの抗酸化物質の合成能は年齢と共に低下すること、遺伝的にもバラツキがあること、および今日のような活性酸素/フリーラジカルが発生しやすい生活環境においては十分でないことから、どうしても抗酸化物質を外部から増強しなければならないのが現状である。 そのためには正攻法として、当然、 食品に頼るのが手っ取り早いということになったのである。

イラスト8資料1

1997年には 「食品因子による生活習慣病予防」の国際会議が日本で開催され、 野菜や果物、ニンニクやコショウなどの香辛料、豆類や穀類、茶やコーヒーなどの飲料に含まれるガンや生活習慣病の予防あるいは抑制成分について報告されている。これらの成分は、活性酸素/フリーラジカル作用を抑制する抗酸化物質としての性質を持っている。
別紙 (図1) 「ガン予防の可能性のある食品“デザイナー・フーズリスト”」 にあるように、ニンニク、キャベツ、大豆はじめ、身近な植物には、 抗酸化物質が含まれていることが分かる。高分子のSODや低分子のビタミンC、ビタミンB群、ビタミンE (トコフェロール) 、ユビキノン、カロチノイド (ベーターカロチン、キサントフィル)、フラボノイド、カテキンなど、既に、聞き覚えのある成分を含み、農業でも病虫害対策に使われる植物が多い。

イラスト9図1

(2) 植物の抗酸化物質はアレロケミカルズ(二次成分)

これらの成分は前述したように植物が長年の進化の過程を経て、環境変化に対応するためや昆虫などの外敵から身を守るために合成してきた二次代謝成分である。

なぜ、 植物に抗酸化物質が含まれるか。
植物は絶えず紫外線や温度変化に曝され、大量の活性酸素/フリーラジカルの発生しやすい条件下で生育しなければならないため、必然として、抗酸化物質を身に付けてきたのである。人間の生体内で合成されるSODも葉緑体は備えている。植物は光エネルギーをたっぷり吸収しないと光合成できないが、光合成は大量に活性酸素を作る。従って、植物はあの手この手の活性酸素対策を立てている。例えば、SODの他に、人間の体内では合成できないビタミンC、ビタミンEや人間の体内ではほとんど合成されないビタミンA、ビタミンB2 カロチノイド、フラボノイド、ポリフェノール、カテキンなどの低分子抗酸化物質を産生している。
カロチノイドは葉緑体が吸収しない青色の光エネルギーを受取り、そのエネルギーを葉緑体に送り込むと同時に、活性酸素を消去して、葉緑素の分解を防いでいる。
このように高分子、低分子の抗酸化物質を多量に身に付けているからこそ、播種から発芽するまでの酸化作用による障害を防いでいる。
因に、大気中の酸素濃度 (普通21%) が上昇すると、 植物の種子は発芽しなくなったり、落葉が早くなったり、生長しなくなったりする。昆虫も人間も酸素濃度の微妙な変化で異常をきたす。ましてや、反応性の高い活性酸素/フリーラジカルの影響は尚更である。

このように見ていくと、天然の植物・種子は、あの熱い太陽、紫外線に一日中曝され、過酷な環境でも生育している理由がわかるし、イチョウ、マツ、ササなど漢方薬に使われる植物には高い抗酸化能があることがわかる。バイオアクトの出発原料はこうした過酷な 環境下で生育しているニームオイルやパインオイルであり、ここに含まれる抗酸化物質の機能を積極的に活用したものである。

1980年に 、「活性酸素を消去する酵素 (SOD) を沢山持つ動物ほど長生きする」という実験結果 (図−2) が発表されてから、抗酸化物質が俄然、注目されだしたのであるが、この図の関係は植物にも当てはまると思われる。 生命力のある植物には高い抗酸化能(アレロケミカルズ) があると見て間違いないのではないだろうか。

イラスト10
図2

(3) 植物内の抗酸化能が減っている?

植物体内の抗酸化物質は紫外線や温度変化によって生ずる活性酸素/フリーラジカルを消去しているだけではない。植物にも動物と同じように虫にやられたり、病原微生物が感染したりする。それにより、活性酸素/フリーラジカルが発生するのである。人間は発熱するなどの予兆を示すが、植物にはそれはない。しかし、種々の生理機能や形態異常を抑制するために、フィトアレキシンを生成する。また、フェノールオキシターゼ、ペルオキシターゼなどの酵素の活性を高めるとともに、多様なフェノール化合物を合成する。

こうした抗酸化物質の官能的テーストは、大ざっぱに言って 「エグ味、苦味、渋味、辛味とニオイ」である。この官能的テーストを持っているほど抗酸化能があると言える。しかし、日常、我々が口にするニンジン、トマト、ネギ、タマネギ、キュウリ、ナスビ、大根等ほとんどの植物には夫々の独特のこのテーストが欠けている。昔のように、生でかじってもおいしくないのである。ネギやタマネギは顔を近づけるだけで目に滲み、涙がでたものである。また、日持ち (鮮度保持) しなくなったという側面もある。

(4) なぜ、 抗酸化物質が減っているのか。

植物も人間と同じように農薬(除草剤)、殺虫剤 、殺菌剤、医薬品、 窒素酸化物 (排ガス)、酸性雨等活性酸素/フリーラジカルが発生しやすい化学的ストレスを受けている。窒素酸化物は動植物体内で大量の活性酸素を発生させる。

活性酸素 / フリーラジカルの強烈な酸化作用を活用したパラコートという除草剤がある。
これが植物体内 (葉緑体) に入ると、そこにある酸素から電子を抜き取りパラコートラジカルやスーパーオキシド、ヒドロキシルラジカルを発生させ、細胞の核のDNAにダメージを与えてを光合成を阻害して、枯れさせるという機序 (フェントン反応)である。
この機序は放射線と同様である。パラコートは地面に触れると有機物や土壌中の鉄のような金属イオンと反応して活性を失い、無害になるということで安全と言われているが、人間が飲むと・・・。

殺虫剤にも活性酸素/フリーラジカルを発生させ、例えば触覚の細胞を破壊して飛べなくさせて、殺すものもある。こうした化学薬剤によって発生する活性酸素/フリーラジカルを消去するためにも、植物体内の抗酸化物質が費やされるわけで、これらの量が多いとたちまち底をつき、植物の健全な生長は阻害されることになる。植物にとってもそれどころではないのである。
化学薬剤を使うと、植物も人間と同じように、多かれ少なかれこの活性酸素/フリーラジカルの影響を受ける。抗酸化物質を薬剤対策に費やしてしまうのである。このことが植物の本来の官能的テーストが減少している要因であると考えられるのではないだろうか。
人間も植物も過度の酸化環境でクタクタになっている?抗酸化物質が豊富であったからこそ植物は人為的な過剰のストレスにも耐えてきたのであるが、昔に比べて、体力が落ちているように、植物の体力も衰えている。現実に、病虫害にも気候変化にも弱くなっているではないだろうか。
デザイナーフーズプランにあるように、抗酸化物質は食品から取るのが効果的である。植物に含まれる抗酸化物質は、人工物とは異なり、体内に吸収されやすい形になっているから尚のことである。体内では合成されない低分子抗酸化物質は植物に依存しなけならないのに、頼りの植物自体に抗酸化物質が少ないとはいかんともしがたい。更に気になることは、残留している化学薬剤である。

このように考えると、有機栽培、減農薬栽培というのは、言い方を換えれば、植物体内の抗酸化物質(二次成分/アレロケミカルズ)を増やし、抗酸化能を高めるという手法ということになるのではないだろうか。抗酸化能が高くなれば病虫害や気候変化にも強くなる。同時に、今、最も求められている植物の食品としての機能性も高くなるということである。
植物も人間も基本は同じで、確かに、状況によっては医薬品の世話になった方がよい場合もある。しかし、平生の食養生で抗酸化能を高めておかなければ副作用も大きい。
植物のお陰で人間は生きているということを改めて認識したものである。
必ずや、バイオアクトの施用は植物の抗酸化能を高める一助になるはずである。植物の恩恵で人間は生きている。

参考図書   丹羽靱負著「活性酸素が死を招く」 (日本テレビ版)
半田節子著 「活性酸素の恐怖」 (PHP)
吉川、河野、野原共著 「活性酸素・フリーラジカルのすべて」 (丸善)
大坪亮一著 「水から学ぶ健康法」 (リム出版)
平野千里著 「原点からの農薬論」 (農山漁村文化協会版)
増田芳雄著 「植物生理学」 (培風館)