ニームという木の多様な特性

  • ニーム資材

バイオアクトの主要な成分の出発原料であるニームの多様な特性と用途があらためて見直しされてきている。ここでは用途についてまとめてみた。

(1) ニームという木

ニームはインド亜大陸の乾燥地帯が原産で12~24メートルの高さに育つ。痩せ地で育ち高温に耐えるが、厳しい寒さや霜に弱い。海抜50~100メートル、年間降雨量
130ミリメートルの地域が生育に適している。
インドではニームの花は1~4月にかけて咲き、実は5~8月にかけてつく。年に1本の木から37~50キログラムの新鮮な実がとれる。インドには1,380万本のニームの木があり、413,000トンのニームシードから83,000トンのニームオイルと330,000トンのニームケーキがとれる。ニームの木はシロアリや虫食いに強い。炭は高級品である。

(2)薬効特性

インドでは昔からアーユルベータ(インド医学)の薬として、このニームの葉、実、樹皮が伝統的治療薬として使われてきた。例えば、心臓病、高血圧、動悸、乾癬、鎮痛、解熱、関節炎、リュウマチ、糖尿病、癌、消化不良、潰瘍、口内炎、神経系疾患、ストレス、
マラリア、気管支炎、皮膚炎であり、最近では避妊薬にも使われている。
インドではニームの薬の錠剤が糖尿病治療薬として販売されている。

この他にも、
「ニームの葉の粉末とウコン粉末を混ぜ合わせたペーストを塗ると皮膚病が治る」「ニームオイルやアザジラクチンを入れた風呂に入ると皮膚病によい」「ニームオイルとココナツオイルの混合液を塗るとダニがよってこない」「ニームオイル、ココナツオイル、マスタードオイルの混合液を塗ると蚊がよってこない」「ニームのお茶をマラリア予防に飲む」「ニームオイルで白癬や疹癬が治る」とかが紹介されている。
インドではニームの小枝をしがむ風習があるが、ニームの樹皮には口内炎を直す成分が含まれていることがわかっている。

(3)化粧品

1920年頃からニーム石鹸が販売されている。1975年からニームオイル石鹸が製造販売されている。美容にもよく、フェイスクリーム、シャンプー、ローションもある。
ダニやノミ、ハエ、シラミ、蚊にも効くということでペット用石鹸、シャンプーもある。家畜の虫下しに効くということからニームの葉の粉末を混ぜた家畜補助飼料もある。
ニーム樹皮の抽出物が入った練り歯磨き、歯磨きパウダーもある。

(4) 家禽、家畜、羊の飼料

ニームは家禽、家畜、羊の飼料の重要な原料である。抽出後のシードが家禽用飼料とし使われる。ニームシードケーキ飼料は授乳中のミルク成分に何の影響もないし、赤血球、白血球にも変化はない。

(5) 肥料、土壌改良剤、病虫害防除、作物の貯蔵

現在、ニームは農業分野で使われることが圧倒的に多い。ニームケーキを圃場に撒けばシロアリやネマトーゼでやられることはない。また、窒素肥料効率が改善されるので硝酸態窒素が地下水に流れ込む機会も少なくなる。

ニームケーキはもともとサトウキビの肥料や港でのシロアリ対策に使われていたのである。

稲の苗を植えつける前に田んぼにニームの葉を入れたり、苗床に葉や小枝を入れたり、種をニームオイルで処理したりして病害虫発生を予防することも昔からやられている。

ニームの葉を2~3%穀物に混ぜて貯蔵害虫による被害を予防するということがインドでは昔からなされている。同様にタンスに葉や小枝を入れて衣類が虫にやられないようにしたりしている。
0.05~0.1%ニームオイルで玄米を処理しておくと8ヵ月程度は害虫にやられないという。

環境ホルモン、室内環境汚染、アレルギー性疾患、レトロウイルスの感染症や食中毒、地下水や河川、海洋、土壌の汚染、食べ物の品質の良し悪しや作物のミネラル不足と気になる問題は山とある。これらの問題の原因は今まで我々が使ってきた物や我々の今までの考え方の中にある。今も、何かの問題の原因を惰性的に作っているのかも知れない。
病害虫だけに作用して人間や動物には害の無い、生分解して、しかも害虫が抵抗力をつけられない様な病虫害防除剤への切り替えが今、起きている問題を極小化し、先々で問題を起こさせない近道である。
幸いにもニームは長年インドで使われてきている実績があり、気候風土の差があるものの切り替えに大きなリスクは伴わない資材である。日本でも着実に成果を蓄積してきている。